福岡県中間市の双葉保育園で、保育園の送迎バスに取り残された園児が熱中症で死亡した事件について。
保育園バスを運転し、バスの中を確認せず施錠した浦上陽子園長はどんな罪に問われるのか?業務上過失致死の疑いで家宅捜索だとどうなるのか?をみていきます。

浦上陽子(ふたば保育園)園長の罪
7月29日の朝8時ころ、母親に見送られ浦上陽子園長の運転する保育園バスに乗り込んだ5歳の双葉保育園園児、倉掛冬生(とうま)ちゃんが、その日に帰ってくることはありませんでした。
浦上園長が運転した保育園バスは、保育園に着き、浦上陽子園長は保育園バスの中にいた冬生ちゃんに気付かずバスを施錠。
冬生ちゃんは、炎天下の保育園バスの中に閉じ込められ、9時間後に発見。その後病院に搬送されましたが、死亡が確認されています。
保育園バスを運転していた浦上陽子園長は、県や警察の調べに対し「保育園で降りたと思っていたが確認はしていない。バスには鍵をかけた」と話しています。
さらに、冬生ちゃんに気付かなかった理由を、「泣いている子をなだめるのに気をとられていた」としています。
- 法人名:社会福祉法人新星会 双葉保育園
- 園名:双葉保育園
- 園長:浦上陽子(うらがみようこ)
- 年齢:40代
双葉保育園のホームページには浦上陽子園長の顔画像はありません。保育園の方針として「ふれあい、あんしん、よろこび」を掲げていますが、この中の「あんしん」については、冬生ちゃんに対し、実践できなかったことになります。
浦上陽子園長は、地元中間市のライオンズクラブに参加しており、保育園のホームページには顔画像はありませんでしたが、クラブのメンバーとして顔画像が掲載されていました。
冬生ちゃんやその母親に対し、園の方針でもある「あんしん」にさせてあげられなかった浦上陽子園長。
冬生ちゃんが帰りの保育園バスに乗っていなかったことで、保育園に慌てて駆け付けた冬生ちゃんの母親に対し、声をかけています。
園長は「冬生君が寝ていたから気づかなかった。ごめんね」と話したという。
出典:https://www.asahi.com/articles/ASP7Z5SF7P7ZTIPE01N.html?iref=comtop_7_06
この言葉を聞いて母親は、「その時点では、何か具合が悪い程度かと思った」と話し、軽い症状だと感じたようです。しかし、母親が病院に着くと冬生ちゃんは「亡くなった」と知らされます。
その際の冬生ちゃんの母親の気持ちを思うと、いたたまれません。
その後、福岡県警は1日、双葉保育園の捜索。捜査1課と折尾署の捜査員らが園内に入り、関係書類を押収しています。福岡県警は業務上過失致死容疑で捜査を進めていくことになっています。
ということで、浦上陽子園長は、警察に業務上過失致死の容疑で調べられていることになります。
浦上陽子園長は業務上過失致死だとどうなる
浦上陽子園長が業務上過失致死の疑いをかけられているとはどういうことなのかを見てみましょう。
事故が起きた時、被害者やその遺族が、事故の原因を作った側の人に対し、民事上の損害賠償請求をして認められることがあります。
それとは別に、事故の原因を作った側の人が刑事裁判で有罪となり、国から刑罰を科せられることがあります。
今回のような保育園での事故の場合、業務上過失致死罪となることが多いと言われています。
条文を見てみると、
刑法第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。出典:https://sendai-keijibengosi.com/hoikujo-jiko-gyoumujoukashitsuchishi/
となっています。
ということだと、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」という個所に当てはまると思われます。
そして、警察の捜査が双葉保育園に入る前の31日夜、双葉保育園から保護者に報告するため保護者会が開かれています。
浦上陽子園長は、
「このたびは私の確認不足と職員間の連携がうまくいっておらず、そのことが原因で倉掛冬生君の大切な命を奪ってしまう重大な事故を起こしてしまい、誠に申し訳ない。ご遺族に真摯(しんし)に対応し罪を償っていきたいと思っている。大切なお子様をお預かりしているにもかかわらず、不信感を抱くような行為をしてしまい、大変申し訳ない。」
このように話しています。
「罪を償っていきたいと思っている」と言っています。つまり、浦上陽子園長は冬生ちゃんが亡くなった今回のことは、”事故”ではなく「事件」で、その罪は自分にあり罪を償いたいと言っているように聞こえます。
そういうことになると、浦上陽子園長は、「五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する」に該当することになります。
過去の保育園での事故
過去の保育園での事件や事故を探してみました。すると、同じ福岡県で保育園の事件がありました。
2019年、福岡県宗像市の「日の里西保育園」で、上体を反らせ手足で支える「ブリッジ」をさせて歩かせていた男児の顔を殴り、約2週間のけがを負わせた疑いで逮捕。
当時の清原こづえ副園長が「泣いていたので、励ますために両頰にタッチするように触れただけ」と話していましたが、「ブリッジ歩きの時に遅れたからたたかれた」と園児が証言し逮捕されています。しかし、今回のケースとは少し違うようです。
また、少し古い話になりますが、平成12年、保育園児の園外保育の際、園児1名が自動車内に残っていることに気付かず、園児を炎天下自動車内に放置した結果死亡させたケースがありました。
このケースについては、担当保母には園児全体の人数確認をおこなう注意義務があるとし、業務上過失致死罪の成立を認めた裁判例が福岡高裁那覇支部でありました。
今回の双葉保育園と同じ降ろし忘れのケースであり、後は過失の程度の判断かと思われます。
そして民事上では、園児がバスの車内にいることを確認しなかったことは、園長が負うべき注意義務に反したと言えますので、園長には民法709条の不法行為が成立するでしょう。
また、保育園を運営する社会福祉法人は、使用者責任を負うことになりそうです。
保育園長と社会福祉法人は、亡くなった園児の遺族に対して、園児の逸失利益(将来、稼働によって得られたはずの利益)や慰謝料について、連帯して損害賠償を支払わなければならないことになるでしょう。
コメント